h2:山路を登りながら

北のかたにある太行山に登るに、山々はけわしくそびえ立ち、何と苦しいことか。
羊腸阪は(羊の腸のように)やたらと曲がりくねり、車輪はこのためにくだけてしまった。
木々はものがなしいさまで、北風が悲声にうなり吹きつける。

h3:山路を登りながら

熊やひぐまが私をみつけてはうずくまって隠れ、虎や豹は道をはさんで鳴いている。
渓谷には人も少なく、雪がひどくはげしく落ちてくるではないか。
頸をのばして深い溜息をついて嘆き、遠征にあたる多くのことをおもう。
私の心は固くふさぎこみ、いっそ東の故郷へ帰ってしまいたくなる。

h4:山路を登りながら

川の水は深く、橋は途中でなくなってしまい、道半ばにして本格的に迷ってしまった。
どうしたらよいのか分からなくなったが戻る道もわからず、夕暮れがせまるのに泊まる宿もない。
行けども行けどもしてもう何日も経ち、人も馬も同じく飢えてしまった。

h4:山路を登りながら

ふくろをかついで薪をとってきて、氷を切りだしてきて粥を作ってみた。
かの偉大な周公が遠征に苦労した悲しい東山詩を思い、私の心は限りなく憂い哀しい。